高齢者の精神機能が低下する原因と対策とは

介護サービスを利用する人の多くが高齢者のため、介護現場では高齢者特有の身体的特徴をしっかり理解しておくことが求められる。特に老化にともなって発現する様々な精神機能の症状に対しては、十分に目を向ける必要があるだろう。その症状の中でも顕著に発現しやすい部分が、感情面や人格面である。頑固になり人の意見を受け入れない、他人への猜疑心が強くなりなかなか良好な人間関係を築けないなど、このようなケースは珍しくない。

また精神機能が低下すると、記憶面でも特徴的な傾向が見られる。新しいものや急激に変化するものを受け入れるのが不得意で、それを覚えることが難しいといった、記銘力の低下などが典型的だ。その他に短期記憶力や想起力の低下なども、記憶面の代表的な症状としてよく知られている。これらの症状や傾向を引き起こす精神機能の低下は、中枢神経系の老化といった器質的な要因に加え、様々なライフステージで直面する喪失感も見逃せない原因と言える。例えば長年連れ添った配偶者をなくしたり、定年退職で社会的な立場を失った体験などが喪失感を生んで、そこから精神機能が低下するケースも少なくない。

高齢者の精神機能低下を防ぐ対策には色々あるが、その中で最も重要になるのが、他者との関係性を積極的に築くことである。前述した喪失感によって内向的になり、日常生活での活動も自ら制限してしまうケースが目立つからだ。したがって介護現場では施設内でのレクリエーション活動等で生きがいや役割を与えるだけでなく、家族との面会や地域社会への参加などを増やし、施設外との関係性にも目を向ける必要があるだろう。