高齢者は様々な能力が加齢と共に変化しており、身体の恒常性を保つ能力も衰えている。若い人では汗をかいたり、服を着たりする事で調整ができる体温さえ、高齢者はコントロールする事が難しい。これは視床下部という脳の部分が加齢と共に衰えていることに加え、高齢者は自律神経が衰えるため発汗もしづらいからだ。
こうした外気温の変化に対して対応が難しい事も織り込んで高齢者の生活をプロデュースするべきである。例えば、風呂の前に服を脱いで体温が下がりやすい脱衣所をあらかじめ暖めておく、若い人が心地いいと感じる暖房の設定温度よりも少し高めの温度を設定する、風呂上りに水分補給を促すなどの配慮が必要だと言えるのだ。
そもそも、高齢者は温度の変化を感じる機能も老化のために衰えているケースが多い。加えて、熱を発する機構である筋肉が加齢によって減少しているため、身体が冷えても身体を温める効率がとても悪い。発汗もしづらくなっており、熱を逃がす機能も非常に弱くなっている。しかし、高齢者のそういった変化を見逃してしまっていては、知らぬ間に脱水状態になっていたり寒さのために活動性が低下して更に寝たきりに近づいてしまったり、という将来の生活の質を引き下げる要因に対応する事ができない。高齢者にずっと生き生きと暮らしてもらうためにも、高齢者と共に暮らして生活をサポートする上で最も必要なのは手厚すぎるくらいの心配りなのかもしれない。